外壁塗装は、住まいの美観を保つだけでなく、雨水や紫外線から建物を守るための最も重要なメンテナンスです。
塗装工事を依頼する際、業者から「ローラー塗装」と「吹付塗装」という2つの工法を提案されることがあります。
これら二つの工法は、仕上がりや費用、そして近隣への影響度が大きく異なります。
それぞれの工法を深く理解し、自宅の外壁と環境に合わせた最適な選択をするためのポイントを徹底解説します。
1. 🏡 ローラー塗装(手塗り工法)の深掘り
ローラー塗装は、塗料を染み込ませたローラーや刷毛を使って、職人が手作業で外壁に塗料を乗せていく工法です。
現在、一般住宅の塗り替えにおいて、最もスタンダードで主流な工法となっています。
🔹 メリットの拡張解説
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飛散リスクの低さと近隣配慮: 塗料が霧状にならず、ローラーで壁に密着させて塗るため、風による塗料の飛散(飛び散り)が極めて少ないです。住宅が密集している地域や、隣家との距離が近い環境では、近隣トラブルを避ける上で最大のメリットとなります。
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確実な塗膜厚の確保: 職人が塗料を押し付けながら塗るため、塗膜が薄くなりにくい特徴があります。塗料が持つ本来の耐久性や防水性を発揮させるためには、メーカーが定める規定の塗膜厚が必要です。ローラー工法は、この**「適正な厚み」を確保しやすい**ため、塗料の性能を最大限に引き出せます。
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塗料の無駄が少ない: 塗料のロスが少ない分、資材費の節約につながり、特に高価なフッ素塗料や無機塗料を使用する場合など、トータルコストを抑えることが可能です。
🔸 デメリットと注意点
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工期と費用のバランス: 職人の手作業に依存するため、吹付塗装に比べると広い面積を塗るのに時間がかかり、結果的に人件費(作業日数)がかさむ場合があります。
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仕上がりの均一性: 均一な塗膜を作るためには、塗り重ねの回数や力の入れ具合など、職人の熟練した技術と丁寧さが不可欠です。技術の低い業者に依頼すると、ムラや塗り残しが発生するリスクがあります。
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複雑な意匠の再現が困難: 平滑でシンプルな仕上がりになりがちで、吹付特有の凹凸や複雑な模様(リシン、スタッコなど)を再現することはできません。
2. 💨 吹付塗装(スプレーガン工法)の深掘り
吹付塗装は、専用のスプレーガンとコンプレッサー(圧縮機)を使用し、塗料を霧状にして外壁に吹き付ける工法です。
以前は主流でしたが、近年はローラー工法が増えています。
🔹 メリットの拡張解説
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優れた意匠性とデザイン性: 吹付工法最大の魅力は、その高いデザイン性にあります。粒子の大きさや吹き付ける距離、塗料の粘度を調整することで、「柚子肌(ゆずはだ)」「吹き付けタイル」「スタッコ」など、**立体感のある多彩なテクスチャ(模様)**を作り出せます。
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短工期での施工が可能: 機械の力で広範囲を一気に塗布できるため、ローラー工法よりも圧倒的に早く作業が完了します。特に大規模な建物や、工期を優先したい場合に有利です。
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凹凸への浸透性: 凹凸や複雑な形状をした外壁(特にモルタル外壁)の場合、ローラーでは塗料が届きにくい隅々まで均一に塗料を行き渡らせることができます。
🔸 デメリットと注意点
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養生の徹底と飛散リスク: 塗料が霧状になって広がるため、周辺環境への徹底した養生(マスキング)が必須です。わずかな風でも塗料が遠くまで飛散し、車や植栽、隣家に付着するリスクが高いです。
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騒音問題: スプレーガンを稼働させるためのコンプレッサーは、大きな作動音(騒音)を発します。これも住宅密集地での施工が難しい要因の一つです。
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塗料ロスによるコスト増: 吹き付けた塗料の一部は、壁に付着せず空気中に飛散(ミスト化)したり、地面に落ちたりするため、ローラー工法に比べて使用する塗料の量が約1.5倍〜2倍程度多くなるとされています。高耐久な塗料を使うほど、このロス分がコストに大きく影響します。
3. 🤔 失敗しないための「塗料」と「工法」の適合性
工法は、使用する塗料や外壁材との相性も重要です。
| 工法 | 向いている塗料・外壁材 | 不向きな塗料・外壁材 |
| ローラー塗装 | 粘度の高い高機能塗料(厚塗りが必要な遮熱・断熱塗料など)、サイディング外壁全般。 | 意匠性を出すための特殊な塗材(吹き付けタイルなど)。 |
| 吹付塗装 | 模様を出すための骨材入り塗料、モルタル外壁(特にリシン、スタッコ仕上げなど)。 | 厚膜が必要な高粘度塗料(均一に吹き付けるのが難しいため)。 |
ローラー vs 吹付 徹底比較表
| 項目 | ローラー塗装(手塗り) | 吹付塗装(スプレーガン) |
| 塗り方 | ローラー・刷毛による手作業 | スプレーガンによる吹き付け |
| 作業時間 | 長め(手作業のため) | 短め(機械作業のため) |
| 塗料のロス | 少ない | 多い |
| 飛散リスク | 非常に低い | 高い |
| 騒音 | 低い | 高い(機械音) |
| 仕上がり | シンプル、フラット | 多彩な模様、立体感 |
| 費用 | 比較的抑えやすい | やや高くなる傾向がある |
| 適した環境 | 住宅密集地、近隣への配慮が必要な場合 | 敷地に余裕があり、近隣との距離がある場合 |
🌟 結論:我が家にはどっちを選ぶべき?
現在の外壁塗装の主流は、近隣トラブルや塗料ロスが少ない**「ローラー塗装」**です。

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ローラー塗装が適しているケース
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近隣への配慮を最優先したい(住宅密集地)。
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コストを極力抑えたい。
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シンプルな仕上がりで十分である。
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防水性や耐久性を重視し、適正な厚塗りが必要な機能性塗料を使う場合。
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吹付塗装が適しているケース
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モルタル外壁などで重厚な模様や立体的なデザインを再現したい。
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敷地に余裕があり、近隣への飛散・騒音リスクが低い。
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工期を最短にしたい(特に広い面積の場合)。
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最終的には、現在の外壁の状態(凹凸の有無など)や、お客様の予算、そして最も重要視するポイント(費用、デザイン、近隣配慮など)を業者と相談し、最適な工法を選ぶことが大切です。
大井町 建築・リフォーム相談センター
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